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「大人が踏ん張らないと子どもたちに『町』のバトンを渡せない」北原良太さんインタビュー

「大人が踏ん張らないと子どもたちに『町』のバトンを渡せない」北原良太さんインタビュー
江北町地域と人
江北町

▼この記事でわかること
・江北町の若手農家グループ『ベリーボタン』リーダー・北原良太さんのインタビュー
・活動の軸が販路の拡大から「教育」に変わった理由
・子どもたちに江北の風土とフードを楽しんでもらう取り組み
・モチベーションは「子どもたちに町のバトンを渡すこと」

北原 良太さん
若手農家グループ『ベリーボタン』リーダー
結婚を機に長崎県から妻の実家がある江北町へ移住。未経験から農業を始める。2018年に若手農家グループ『ベリーボタン』を結成後、マルシェや収穫体験などさまざまな取り組みを行う。近年は、農業体験やアクティビティ、キャンプなど子どもたちに向けた取り組みに力を入れている。
https://www.instagram.com/belly88button/

こうほくふうどを子どもたちの思い出に刻む

結婚を機に江北町へ移住し、未経験から農業を始めた北原さん。農業を通じて人と関わりたい、販路を広げていきたいという思いから、2018年に同年代の農家仲間たち5人と若手農家グループ「ベリーボタン」を結成。以降、マルシェ、農業体験、飲食店とのコラボ、写真展など幅広く活動してきました。
こうした活動を経て、2023年からは教育分野に舵を切ったと言います。その理由は。
「結成してから数年は、思いつくことは全部試そうぜ!という気持ちでなんでもやってきました。いろんなところでお話ししたり、大勢の人と交流したりするうちに、これからの江北町やベリーボタンの活動の方向性を考えようという話になったんです。
僕には子どもが3人いて、ベリーボタンの仲間も子どものいる人が多い。町の課題も踏まえて『子どもたちが帰ってきてくれる町にする』という方向性にシフトしてやっていくことにしました。それが2023年ですね。」
江北町で育った子どもたちは、大きくなったら町を出てそのまま帰ってこないことがほとんど。ベリーボタンは『こうほくふうど』という理念を掲げ、子どもたちに江北の風土とフードを体験してもらう取り組みを次々と行なっています。

ベリーボタンのメンバー。写真中央が北原さん。 提供:北原良太さん

「江北町に移住して子育てしている僕の実感としては、江北は『ちょうどいい町』。スーパーマーケットや病院がそろっていて、公園がたくさんあって、自然にも親しみやすい。ベリーボタンでやりたいことを相談したら学校や役場が協力してくれるのも自治体の規模がコンパクトだからだと思います。
何より「食」が最高です。農家が多いから、直売所のラインナップが充実しているし、おすそ分けをいただくこともあります。安全な方法で栽培されたお米、お野菜、果物を子どもたちがもりもり食べているのを見ると、江北町に来て良かったと思います。
子どもの頃の経験はとても大きなもの。いまの子どもたちが子育て世代になった時に、キャンプ楽しかったよね、江北の食べ物っておいしかったよね、と思い出して、『子育てするなら江北がいいよね』と帰ってきてもらいたいです」

ベリーボタンで企画した家族向け体験会の一コマ。農業用ため池カヌーを楽しむ子どもたち。 提供:北原良太さん

「白菜は一玉だと売れない」販売会での発見 

教育分野に舵を切ってからのベリーボタンは、中学生の職場体験の受け入れ、高校での出張授業、キャンプ、カヌーや農業体験、浮立(ふりゅう)など地域の伝統芸能とコラボしたマルシェ、と「こうほくふうど」の理念に基づいて活動しています。
中学生の職場体験では、農業や畜産に興味を持つ子どもたちに野菜の収穫や定植(植える作業)、販売を体験してもらいました。
また、収穫期は作業で手いっぱいになる農家の課題を解決しようと企画したのが、高校生による米と野菜の販売会。北原さんはそのサポートを行いました。
「高校生たちと出張授業やLINEグループで話をしながらサポートしました。と言っても、『仕入れ値だけ押さえてくれたらいいよ。』とだけ伝えてやりたいようにやってもらいました。準備期間に自主的にスーパーマーケットに野菜の売値を見に行ってくれたり、積極的に意見を出したり、高校生たちが想像以上に楽しんでくれたのが嬉しかったですね。」

みんなの公園で行った高校生たちによる販売会の様子。提供:北原良太さん

「販売会が始まってからは、『米も野菜も売れるのに、白菜一玉だけなかなか売れません!』『売値はスーパーマーケットより安いのに!』と報告が上がってきました。白菜が大きすぎたんですね(笑)カットして売りたいという意見もあったけど、衛生的に難しいという現実的な話をしました。
もちろん売れることは大切なんですけど、やってみて分かる発見があったり、出てきた課題について話し合ったりすることが高校生たちにとっては大きい経験だと思います。
ベリーボタンのやりたいことや想いは子どもたちに伝わっていると、この2年で実感しています。」

販売会後のベリーボタンと高校生たちの集合写真。距離感の近さがうかがえる。提供:北原良太さん

大人が踏ん張らないと町がなくなってしまう 

農家のお仕事、ベリーボタンの活動、家庭では3児の父、とやることがたくさんある北原さんのキャパシティは常にオーバー気味。「ときには絞り出して120パーセントの力でやっている」と言います。それでもペースをゆるめることなく活動し続ける理由を聞きました。

「僕は1985年生まれで、バブルが弾けたのが1992年。小学1年生から『失われた30年』がスタートしました。ニュースをちゃんと見る子どもだったんですけど、テレビの向こうでおじさんたちが世の中に対する文句をぶちぶち言っていたり、立派な肩書きを持ったおじさんが収賄で次々捕まったりしているのがとても嫌だったんですね。
『自分が大人になった時に踏ん張らないと本当に町がなくなってしまう』と思ったのを今でも覚えています。江北町は他の町と比べて30〜40代が多いんです。人口ピラミッドでそこだけ「ちょこん」と飛び出ている。その「ちょこん」を守っていかないと、町は残らないし、子どもたちにバトンを渡せない。その使命感で動いています。」

ベリーボタンで企画した家族向け体験会の一コマ。アスパラガスの収穫体験後、みんな笑顔。 提供:北原良太さん

江北町ですくすく育つ子どもたち、同年代で視点や考え方が似ているベリーボタンの仲間たちがいつも北原さんを支えています。
「一人だったら絶対やれていないですね。そもそもインドア派だからイベント当日はそんなにできることがなくて(笑)メンバーがてきぱきとテントを組み立ててくれているのを見て、本当にありがたいなと思っています。
いまのベリーボタンの活動のサブテーマは『自分の子どもを喜ばせる』。子どもが喜んでくれたら良い企画だったんだなと思えます。カヌー体験はとても喜んでいましたね。まだ3人とも小さいから成長とともにベリーボタンの活動も変わっていくかもしれません。何をするにも「こうほくふうど」を大切に、町のバトンを良い状態で渡していけるようにがんばります。」

江北町の田園風景。提供:北原良太さん

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これまでのベリーボタンの活動についての記事
https://www.sagajikan.com/yomimono/yomimono_tag/ベリーボタン/
ローカリストアカデミー北原さん紹介記事
https://www.sagajikan.com/sagalocalist/localist/2021/kitahara.html

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