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「活気のある島にしたい。だからグランピングと海士を両立する。」宗秀明さんインタビュー

「活気のある島にしたい。だからグランピングと海士を両立する。」宗秀明さんインタビュー
松島地域と人
松島

▼この記事でわかること
・離島にグランピング施設を作った理由
・島で暮らす若者たちが中心になって計画、運営に携わる
・グランピング施設『ON THE CLIFF』の反響。利用者の多くがリピートを希望するその理由は
・島で楽しく平和に暮らしていくために漁業と観光業のバランスを取る

宗 秀明(そう ひであき)さん
Island MATSUSHIMA代表
松島で生まれ育つ。高校卒業後、一般企業に3年勤めたのち帰島。海士や養蜂、製塩などを行うかたわら、2022年にグランピング施設『ON THE CLIFF』をオープン。島在住
の若者グループ・Island MATSUSHIMAのメンバーとしてさまざまな取り組みを行う。
https://onthecliff.jp

漁業だけで島で暮らし続けることは難しい

呼子港から定期船に乗って約15分の離島・松島。漁業者が多く暮らす、この小さな島に3年前にグランピング施設『ON THE CLIFF』がオープン。その人気ぶりはすさまじく、これまでに1,000人以上が宿泊しています。
運営を行なっているのは、島の若者グループ『Island MATSUSHIMA』。その中心メンバーが宗秀明さんです。

松島の人口は約45人。そのうち10人ほどが20〜30代の若者と、他の離島と比べて若者の比率が大きいのが特徴です。高校進学を機に一度は島を出るも、その後自らUターンを選択する若者が多いのはなぜなのでしょうか。
「島の先輩たちが優しくて、島全体で一つの家族のような雰囲気なんです。だから暮らしやすいのだと思います」
自身も松島で生まれ育ち、子どもの頃から兄弟や幼なじみたちと海で遊んできた宗さん。高校卒業後、すぐに海士(あま)になりたいと考えていましたが、島以外の世界も経験しておいた方がいいという父親の勧めで一般企業に三年勤めた後、帰島。

現在は、父と同じ海士として働いています。素潜り漁では、ウニ、サザエ、ナマコのほか、クエやヒラメを銛で突いて獲ることもあります。
「海が好きだから、海に関わる仕事に就けていることが嬉しいです。海士は自分のペースで働けるし、がんばった分だけ報酬につながります。
漁獲した海産物はポケットマルシェというオンラインサイトで販売しています。市場に左右されず適正な価格で販売できますし、生産者と消費者が直接やり取りできる仕組みがあるので、『おいしかったです』とコメントをもらえることもあります。自分が獲ったもので喜んでいただけるのがやりがいです」

同年代の仲間達も、海士などの漁業者や釣り客の瀬渡しといった海に関わる仕事をしています。
その仲間たちと6年前に始めたプロジェクトがグランピング施設『ON THE CLIFF』のオープンでした。
「父と同じ海士になることは子どもの頃からの夢でした。しかし、地球温暖化の影響で漁獲量は年々減少していて、今はピーク時の10分の1ほど。漁業だけでこの先もやっていくことには不安がありました。
この先もずっと島で暮らしていきたい、という思いは仲間たちも同じ。そのために何をすればいいのかを考えたなかで、グランピング施設を作ろうとなりました」

きっかけは、宗さんのお兄さんが2016年から経営している島のレスレストラン『Ristorante MATSUSHIMA』のお客さんから「島に泊まれる場所があるといいね」と言われたこと。また、そのレストランの好評ぶりを目の当たりにし、島の魅力がきちんと伝われば人が来るとわかっていたことも後押しになりました。

小さい頃から何をするにも一緒だった仲間たちとのグループに『Island MATSUSHIMA』と名をつけ、プロジェクトを開始しました。

島の自然と人の魅力が120%伝わるグランピング&アクティビティ

松島は島全体が山のようになっており、『ON THE CLIFF』のオープン準備は山の一部を切り開いて整地することから始まりました。
「はじめは手作業で木を切ることから始めました。大変でしたが、島の人たちがたくさん手伝ってくれましたね。どんどん人が集まってきて最終的に10人ぐらいでやっていることもありました。中には道具を貸してくれる方も。上の世代の人たちも『若い人たちが元気にやっているのが嬉しい』という感じで応援してくれました」
ハード面の整備に加え、行政への申請やクラウドファンディングの実施なども、海士の仕事と並行して行いました。クラウドファンディングは1ヶ月ちょっとで目標金額を上回る400万円ほどが集まり、期待を感じられたといいます。

そして、2022年7月に『ON THE CLIFF』をオープン。毎年、予約はすぐに埋まり、これまでに1,000人以上の人が宿泊しています。
客層は家族連れ、カップル、卒業旅行の高校生などさまざま。SNSでの発信やメディア露出の影響もあるのか、東京など遠方から宿泊する方もいます。

好評の理由の一つが島だからこそ体験できるアクティビティ。
「Island MATSUSHIMAの仲間たちは、海遊びや釣りのプロフェッショナル。それぞれの強みを活かして、魚釣り、シュノーケリング、クルージング、SUP体験などさまざまなアクティビティを体験できます。普段、海の近くで暮らしていない方たちにとっては非日常だと思います。
こうしたアクティビティのインストラクターや安全監視員、施設の清掃などで雇用が生まれ、少しずつ島の人にお給料を渡すこともできています。今後は、無理のない範囲でこういった仕事を増やしていくのも目標の一つです」

『ON THE CLIFF』のオープンから2年で、利用者の多くがリピートを希望する大好評ぶり。最近では海外からの問い合わせも増えているといいます。
「お客さんたちが島の魅力を感じてくれているのかなと。人もそうだし、景色とか食事とか。運営に外の企業や人が関わるのではなく、全部島の人間でやっていて、関わり方はさまざまですが『みんなで島を良くしていこう』と協力してくれています。そういう一体感や和気藹々とした雰囲気が伝わっているのかなと思います」

楽しく平和に暮らしていける活気のある島を目指す

『ON THE CLIFF』の運営と海士の他にも、養蜂や製塩を行い、忙しい日々を送る宗さん。さまざまなことを行っている根底には、「海の資源を守りたい」という思いがあります。
「資源を獲りすぎないことが大事なので、海士の仕事を意図的に減らしています。
実際、ON THE CLIFFやアクティビティといった観光業を始めて、漁業以外でも収入を得る手ごたえを感じています。」

「今後は、ON THE CLIFFを安定して運営できるようにしながら、少しずつアクティビティなど新しい体験を増やしていきたいです。
過疎や気候変動による漁獲量の減少などさまざまな問題はありますが、悲観するだけでなく、楽しく平和に暮らしていけるように、活気のあふれる島になるように、できることをやっていきたいと考えています」

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