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「舞台の上のように人が輝く場所づくりとディレクションをするのが楽しい」山本卓さんインタビュー

「舞台の上のように人が輝く場所づくりとディレクションをするのが楽しい」山本卓さんインタビュー
佐賀市地域と人
佐賀市

▼この記事でわかること
・富士町でコワーキングスペースやキャンプ場の運営、映像制作業を行なっている山本卓さんのインタビュー
・東京から佐賀への移住、地域おこし協力隊に応募を決めた理由
・佐賀は子どものような大人が多い
・コワーキングスペースは「人を輝かせる」場所
・目標は「ニヤニヤしながら生きていきたい」

山本卓さん
合同会社Light gear・代表
2019年に佐賀県地域おこし協力隊として佐賀市へ移住。現在は、動画の制作やコワーキング&レンタルスペース『音無てらす』運営などを行なっている。
https://www.lightgear.jp

佐賀には「子どもみたいな大人」がたくさんいる

山本さんが東京から佐賀に移住し、地域おこし協力隊として着任したのは35歳の頃。
「それまでやっていた役者や映像制作の仕事に限界値が見えてきてそろそろいいかな、と思っていました。新しいチャレンジをしたいな、東京にいなくてもいいな、自分が楽しめる場所ってどこだろうと考えていたとき、政府の会見で「これからは地方に力を入れます」と言っているのを聞いたんです。ほんまかな?地方に力入れるってどういうことなんだろう?と調べていて地域おこし協力隊の制度を知りました。」

運営するコワーキングスペース「音無てらす」から見える景色。
運営するコワーキングスペース「音無てらす」から見える景色。山本さんにとって移住直後の佐賀の印象は「とにかく静か。夜は虫の声が聞こえて良いところだなと思った」

ちょうど有楽町で開催されていた九州移住フェアに行ったところ、入り口の一番近くにいた佐賀県の職員の方に声をかけられて話を聞いたのが移住のきっかけになりました。
「佐賀のことを聞いた印象は「何もない場所」(笑)でも、地域の編集者を地域おこし協力隊として募集することを教えてもらって「何もないと思っていた方が取材するにもおもしろそうだな」と思ったんです。やります、佐賀に行きますとその場で決めました。マジでノリですね」

着任後は、Webメディア「佐賀のお山の100のしごと」
https://www.instagram.com/saga100shigoto/)の編集者として、佐賀で活動する人々に取材を行い、地域と人の魅力を発信。佐賀の魅力は「子どものような大人」が多いことと言います。

「東京にいる大人って、「ちゃんと大人」じゃないですか。これは仕事だから、といった割り切りが多いというか。佐賀だと、仕事に関係があることもないことも興味があったらとりあえずやって、形にしていく人が多いなと。なんでだろうと思った時に、「やりたいからやる!」と言って本当にやってしまうような子どもっぽい心を持っているからだと気づきました。一見仕事に関係ないことも無理くり絡めたりもするし(笑)そうやって仕事を楽しんでいるんですよね。
佐賀だと「おもしろそう」と思ってやったことは、周りがやっていないことが多い。だから、必要な人とマッチングするとすぐに仕事につながったりすることが多いんだと思います。それは東京ではなかなかできないことではないでしょうか」

大阪で生まれ育った山本さん。取材時、流れるような関西弁が印象的だった。
大阪で生まれ育った山本さん。取材時、流れるような関西弁が印象的だった。

「人を輝かせるのが好き」なプロデューサー気質で一歩を踏み出せない人をサポート

地域おこし協力隊の任期終了後、2022年に富士町にコワーキングスペース「音無てらす」をオープン。これには、「フジタさん」という富士町に住む男性の存在が大きかったといいます。
「フジタさんは地域おこし協力隊をサポートするNPOの会員をされていて、協力隊の面接のときに知り合いました。地域おこし協力隊の任期中、精神的につらいことがあってもう佐賀を出ようかなと思ったことがあったけど、その時に励ましてくれたのもフジタさん。彼がいなかったら佐賀に残っていないでしょうね。なぜ富士町にしたのかといえば、フジタさんがいて、いいなと思う土地も富士町にあったから。たまたまご縁でつながったというところです」

ときどきは夜カフェとしてもオープン。仕事終わりにドリンクを飲みながら人とおしゃべりできるのが好評で、さまざまな年齢や職業の人が集まります。初対面同士がほとんどの場をどのように整えているのでしょうか。

「ほんま何にも考えてなくて、僕が心地良いようにやっています。お客さんが来た時に寝転んで「いらっしゃい」と言ってる時もあるし(笑)
と言いつつ、実際はせっかく来ていただいたからには全員にスポットライトを浴びてほしいから、お互いへの紹介の仕方やその人の何を掘り下げるか、など場の回し方はかなり考えていますね。そのあたりは舞台作りに近いかもしれません。どうすれば一番輝いて見えるかな、お客さん同士で盛り上がってもらえるかな、とか。
ここは周りになにもないし、BGMもあまりかけないから、誰も話さないと静かなんですよね。だから、間が怖くなってみんなが自ずとしゃべり始める。そうやってコミュニケーションを後押しできる場になっているといいなと」

音無てらすのカフェのメニュー表
オリジナルのブレンドコーヒーのほか、和紅茶やチャイなどドリンクメニューが充実している。

音無てらすでは、自分なりのお店を作り上げる「日替わり店長企画」やイベント挑戦プランなど、場所のレンタルや運営のサポートといったサービスを提供。やりたいことがある人の背中を押す場でもあるのです。
また、知り合いの紹介などでこれまで数人の若者をインターンとして受け入れ、サポートしてきました。
「やりたいことがあるなら山本さんのところに行ったら?と周りから思っていただいているみたいで。みんな来る時はちょっと疲れているんですよね。スキルもあるし、やりたいこともあるけど、一歩を踏み出せない。
たとえば映像制作ができる子には、佐賀で撮影していた映画の現場に来てもらったり、一緒に営業に回ったり。イラストも描けるから音無てらすで売っているコーヒーのロゴを作ってもらったり。そうやって一緒に何かやっているうちに、自分のできることやスキルで食べていく自信もついていくと思うんです。
店長企画やインターンをやっていて思うのは、彼らに必要なのは、スキルややりたいことを活かせる方向性を示すディレクションや場づくりのサポート。音無てらすや僕の存在がそういうところで役に立つと良いなと思っています」

音無てらすのオリジナルブレンドコーヒーのカードとサコッシュ。
インターンの方がデザインした、オリジナルブレンドコーヒーのカードとサコッシュ。

「人をサポートするのはシンプルにおもしろいんですよね。この人はこうなったらおもしろいんじゃないかと思ったことを伝えて、相手が『ちょっとやってみます』と言ってくれるのがめっちゃ楽しい。それが一つひとつ形になって、次のステップにまた進んでいく。その変化し続けている姿を見たいがためにやっているところはありますね。」

ニヤニヤしながら生きていきたい

コワーキングスペースの運営のほか、映像制作やキャンプ場の運営なども行なっている山本さん。イベントでの登壇やMCとしても引っ張りだこで全国を飛び回っていることも。さまざまなジャンルの仕事を並行してやることは苦ではないといいます。
「自分はこういう人間だ、と決めたくないんですよね。仏教に『諸法無我』という言葉があります。あらゆる事物は関係性によって変化していくもので不変の「自分」はない、といった意味なんですが、僕もそうだなと。
映画の現場に行けば映画監督と言われるし、音無てらすにいればコワーキングスペースのオーナーですし、僕が何者であるかはその場の状況や周りが決めること。自分はこうだ、と決めつけてしまうとがんじがらめになりがちじゃないですか。お声がけいただいたこと、おもしろそうなことにはどんどんチャレンジしていきたいから、身軽でいたほうがいいんです」

映像制作の仕事も精力的に行なっている。2023年には江北町を舞台にした映画『土のひと 風のひと』の監督を務めた。

今後の目標は。
「とにかくずっと『ニヤニヤして生きていきたい』と思っています。東京から佐賀に行こうとしていた頃、ふと鏡を見たら自分の顔が全然笑っていなかったんですよね。これあかんなと思ってから、生活のベースには「笑顔でいること」があるんですよ。
でも笑いにもいろいろな種類があるじゃないですか。どう笑っているときが一番なんだろうと思ったら、なにか企画を考えたり、プランを練ったりしているときのニヤニヤだったんですよね。次々に新しいものを生み出していくとか、何か行動を起こせる状態にしておくことが、自分にとって笑顔で生きていける状態なんです。
今後は佐賀県の人口を越える村づくりに挑戦してみたいと思っています」

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