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「島が存続できなくなってもみんなが一緒に生活できる場所をつくりたい」サテライトゆうぜんインタビュー

「島が存続できなくなってもみんなが一緒に生活できる場所をつくりたい」サテライトゆうぜんインタビュー
馬渡島地域と人
馬渡島

▼この記事でわかること
・離島に高齢者施設を開設した理由
・いつも通りの生活を続けながら介護に慣れてもらう
・開設後の反響、島民とのエピソード
・今後の展望

サテライトゆうぜんのみなさま
2022年3月に開設した「サテライトゆうぜん」。高齢化と過疎の進む離島で、高齢の方々が1日でも長く島で生活できるサポートを行なっています。
今回は施設を運営する浦丸裕香さん、牧山美奈子さんにお話を伺いました。
https://www.facebook.com/yuzen.yobuko/?locale=ja_JP

夫の両親と一緒に島の人たちも介護しよう

7つの離島の中でもっとも面積が広く、人口200人を超える馬渡島。
他の離島と同じく、介護が必要になった高齢者は島を出て本土の施設に入らざるを得ない状況が課題でしたが、2022年に高齢者施設「サテライトゆうぜん」が開設してから状況が変わりつつあります。
施設長の浦丸さんはもともと唐津市内で夫と高齢者施設を経営していました。夫が島出身だったこともあり、介護が必要になり島を離れざるを得ない島民やその家族の相談を多く聞いていたと言います。
「島にいたいけど離れなくてはいけない、という話を聞くたびに胸が張り裂けそうな思いでした。夫の両親も島に住んでいて、これからのことを考えないといけない時期だったこともあり、せっかくなら他の人たちも一緒に見ようと思いました」(浦丸さん)

島のカトリックの聖母園が閉園した後、施設を活用する形でサテライトゆうぜんを開設。開設前の説明会には30人近くが集まり、需要の高さを感じたといいます。要介護者の家族は働いていたり、自身も高齢だったりと家庭内で24時間介護をするのは難しい状況。家を空けている間に何かあったら、という不安をもつ家族にとってサテライトゆうぜんはまさに希望の光でした。 現在の利用登録者は10人。島内の要介護者のすべてを含んでいます。「看護小規模多機能型居宅介護」という形態で、常に看護師に相談できるため、介護度が高い方でも安心して生活できています。

介護は「される人」にこそ慣れが必要

サテライトゆうぜんができた一番のメリットは「介護慣れ」だと浦丸さんは言います。
「高齢者にとって急激に環境が変わることは大きな負担になることもあります。よくあるのは、骨折などで入院して認知症が進むケース。ただ、島に住んでいる人は認知症の方がとても少ないんですよね。ご家族があまり怒らず、本人の自尊心を傷つけないように接しているからだと思います。それなのに、介護が必要になったからと急に本土に移ると自分が介護される意味がわからず混乱したり、認知症を発症したりする場合があります。介護はされる側もはじめは抵抗があるものですから。
ここがあることで、日中だけデイケアで過ごしたり、訪問看護を受けたりと生活を大きく変えることなく介護を受けられます。だから本土に行っても、精神的に無理なく施設や病院での生活スタイルに移行できる。それが一番大事だなと思います。」(浦丸さん)

サテライトゆうぜんができたことで、島に新たな雇用も生まれました。島在住のスタッフは7名。
その一人が、島内の保育園や診療所で働いた経験もある牧山美奈子さん。
「診療所で働いているとき、島を離れたくないと言う方を多く見てきました。病気もないのに介護が必要になったら向こう(本土)にやられることをみんな不安に思っていたと思います。サテライトゆうぜんができたことで、ここがあるから大丈夫、と本人も周りもほっとしたはずです。」(牧山さん)

家族が追い詰められないようにサポートするのも仕事

牧山さんのお父さんはサテライトゆうぜんを利用し、島で最期を迎えました。
「最後の方は毎日看護師さんに通ってもらって、家族みんなに見守られて過ごしていました。絶対に島から出ない、って言っていたけれどそれを叶えられたのもサテライトゆうぜんがあったから。亡くなった時、とても穏やかな顔をしていて、私たち家族も満足感がありました。
母もサテライトゆうぜんを利用していて、「父みたいに最期まで島で過ごしたいからお願いね」と言っています。」(牧山さん)

サテライトゆうぜんから見える景色。
サテライトゆうぜんから見える景色

サテライトゆうぜんでは利用者だけでなくその家族のケアも大切にしている。
「介護に追われていると心身共にいっぱいいっぱいになってしまう。人によっては他人に相談しづらくて追い詰められてしまうこともあります。だから気になるおうちには絶対に会いに行ってお話しします。はじめは、家庭のことだからとなかなか話してくれない方も、何度も会いに行くうちに、悩みを打ち明けてくれたり、訪問介護の利用回数を増やしたりしてくれる。そうやって福祉につなげていくことができます。
介護はする側も、される側も無理があると行き詰まってくる。だからこそ、利用者だけでなく家族とのつながりも大切にしています。」(浦丸さん)
サテライトゆうぜんができたことで生じた変化は他にもあります。開設後から日常的に利用者の体調や薬を管理し、診療所との連携をしっかり取るようになったことで島内で容体が急変する人が減少したのです。
さらに、来年度はサテライトゆうぜんと同じ敷地内に保育園を開設予定。子どもの数は少なくなったとはいえ、働く親にとって子どもをどこに預けるかは課題になっていました。サテライトゆうぜんが運営するなら、という声に後押しを受け開設を決めました。

馬渡島の人たちだけが暮らす町を本土に作りたい

サテライトゆうぜんの今度の構想は。
「今度、呼子に住宅型有料老人ホームを開設します。そこには、馬渡島の人たちだけが入居できるようにしたいなと思っているんです。島での生活をつづけることが難しくなったとき、本土に行くにしても、知っている顔ばかりのところがいいかなと。
サテライトや保育園は、この先10年ぐらいを見据えてやっていること。ここ数年だけでも人口減少はぐんぐん進んでいて、10年後は島の人口がどうなっているかわかりません。島内で施設やサービスを維持していけなくなっても、みんなが一緒に暮らせるように小さな町を作りたいなと思っています」(浦丸さん)

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