地域に根付いて活動する人が、自身の言葉で活動や想いをつづる「わたしがつくる、さが」。第一回は、小城市でフリーペーパー『おぎなう』の制作・発行やまち歩きイベントの企画・実施を行なっている音成信介さん。印刷会社の社長として、一市民として、小城の街や人に感じる魅力や自身の活動について語っていただきました。
音成 信介(おとなり しんすけ)
株式会社音成印刷 代表取締役社長
佐賀県小城市の創業119年の印刷会社・株式会社音成印刷の八代目。
2008年に音成印刷に戻り、県内の行政や企業の情報発信企画やブランディングなどを手掛け、中でも印刷を情報加工サービス業と位置付け、小城のフリーペーパー『おぎなう』の制作・発行など地域の情報発信に取り組んでいる。
おぎ暮らし観光実行委員会のメンバーとしても活動中。まち歩きのイベント企画運営など、地域を盛り上げる活動も精力的に行っている。
HP: https://oginow.sagasubanta.com/
フリーペーパー『おぎなう』〜印刷会社ならではの地域の盛り上げ方〜
『おぎなう』は音成印刷でつくっている小城の地域情報誌。13年前に第1号を発刊し、以降、年に6回制作・発行しています。小城では自分たちの街にあるお店を地元の人たちが知らないことがよくありました。
隣の定食屋さんはおいしいのかな?とか。入ってみたいけど勇気がないとか。
そこで、地元の情報を扱っている音成印刷だからできることを考えて始めました。
好評なのはやはりグルメ情報。それから、発刊以降変わらずにつづけている小城の人を紹介する『きらりん』というコーナーです。
鯉料理のご主人を取り上げた数年後に、代替わりした息子さんを紹介するといったエモい出来事もありました。
13年つづけるなかで、デザインや特集、内容を少しずつ変えながら、ようやく小城市民をはじめ多くの方に認知してもらえるようになりました。
今では、印刷会社よりも『おぎなう』を作っている会社として認知されている気がします。
『おぎなう』から暮らし観光まち歩きへ
2020年、佐賀県主催の移住者向けイベントで暮らし観光まち歩きの案内人をしてほしいと依頼がありました。
暮らし観光まち歩きは参加者とともに街を歩いて、街のことを知ってもらうイベント。その街で暮らす人やありのままの生活を知る、体験することで観光客は一時的な市民となり、その土地の人や暮らしに接することができる”暮らし観光“の一種です。
どうして自分なのかと思っていたのですが、お声がけしてくれた嬉野の旅館・大村屋の北川さんに「『おぎなう』は暮らし観光を体現しているから、音成さんだったら暮らし観光視点のまち歩きがきっとできますよ」と言われて、フリーペーパーも暮らし観光まち歩きも根っこは一緒なのだなと。
イベントをきっかけに私自身がハマって3人の仲間とともに実行委員会を立ち上げました。2022年10月に第1回を開催して以降これまでに6回実施しています。
意識していることは3つ。
1つ目…街の営みを伝えること。
事前にアポを取るのですが、当日行くと閉まっていたり、会えなかったりすることもままあります。逆に普段は入れないところに入れてもらえるなどいろんな偶然が起こるので、それをひっくるめて街の営みとして紹介するようにしています。
2つ目…街に暮らす人に会うこと。
暮らし観光まち歩きでは、観光スポットよりも街の人に会いに行くことを目的にしています。お店の人だけでなく、通りすがりに出会う知り合いにも話しかけることで、どんな人が住んでいるのかを知ってもらえるようにしています。
3つ目…裏道を行くこと。
車だと目的地に早く着くことはできるけど、その道中で脇道にそれることはほとんどありません。街を歩く中で、ちょっとした路地裏の小道を見つけると飛び込んでみるのも意識していることの一つです。
私たちはそれをRPGゲームに例えています。もしかしたらこの道の先におもしろいスポットや出来事があるかもしれないと思いながら散策するとワクワクして、街の見え方も変わってきます。
参加者の方から「すてき」「おいしい」と言われたとき、私は「でしょ?」とよく返すみたいです。
それはきっと参加者の皆さんに、自分が好きだと感じていることに共感してもらえたからだと思います。人に小城を好きになってもらえることで、私自身が昔よりさらに小城のことを好きになれました。
また、参加者同士が仲良くなって関係性が生まれることに喜びを感じています。中には、小城に移住された方、小城市役所に採用が決まった方も。
街を紹介する度にいろんな視点に気づかされ、思わぬ出来事が起こったり、共感する人に出会えたりと本当に楽しい。私が一番楽しんでいるかもしれません。
それから、小城の魅力は「人の良さ」だと『おぎなう』や暮らし観光まち歩きを通じて改めて実感することができました。お店への訪問や取材依頼にしても皆さんの度量の広さを感じます。
大事なことは、継続。
『おぎなう』や暮らし観光まち歩きを続けていくことが大切だと思っています。小城の良さに共感する人たちが少しずつでも増えていけば、自分たちが自分たちの街をもっと好きになることができると考えています。
それから、体験コンテンツを形にしたいですね。泊まったり、おいしいごはん食べたり、モノづくりを体験できたりできるようになるともっと街がおもしろくなるはず。
私が思う小城の良いところを“でしょ?”と共感を広げていきながら、小城をもっとおもしろくしていきたいですね。
小城をこよなく愛する音成のおすすめグルメ
ホワイトハウス
創業約50年のイタリアンの老舗。カジュアルな雰囲気の店内で本格的なイタリアンを楽しめます。日によって出されるパスタメニューが変わるので、定期的に通う人も多い地元で愛される名店です。
オーナーシェフの南里さんが作る料理はどれもおいしく、特におすすめは、「牛すね肉のワイン煮込み」。口の中でホロホロにとける食感は絶品です。
ルージュ・エ・ノアール
小城でも老舗の喫茶店。パフェのメニューがとても多く、なかでも、ようかんを使ったパフェが食べられるのはここだけ。
料理のメニューも豊富で注文時に迷ってしまうほど。個人的には、オムライスやナポリタンが好きです。ずっと残っていてほしいおススメの喫茶店です。