年4回、佐賀県内の現役地域おこし協力隊を対象として予定している研修会の、第3回目を開催しました。
第3回テーマ:「失敗から学ぶ!どんな状況でも前向きに活動していく方法」
日時:令和4年12月13日 10:00~16:30
開催場所: 佐賀県市町会館 (佐賀県佐賀市堀川町1-1)
主催:佐賀県
運営:一般社団法人佐賀県地域おこし協力隊ネットワーク(SCN)
講師:前川真司(まえかわしんじ)さん
株式会社みんなの奥永源寺 代表取締役
一般社団法人鈴鹿10座エコツアーガイドクラブ 事務局長
今回は、滋賀県東近江市地域おこし協力隊OBの前川真司さんを講師としてお招きしました。前川さんは、地域資源の掘り起こしと地域団体の支援を中心に活動され、「地球愛の醸成」に焦点を当てて地域活性化事業に取り組んでこられました。
任期後、地域住民の出資による株式会社を設立し、染料や生薬として使われてきた希少な資源「紫草(むらさき)」を用いたオーガニックコスメを商品化。地域に仕事と人の流れを生み出しています。
限界集落とも言われる地域で始まった前川さんの活動は、一筋縄ではいかない部分もあったと言います。地域に受け入れられなかった期間も心折れず、広く知られるような実績を手に活動任期満了を迎えるには、どのようなプロセスがあったのでしょうか。真摯な思いを胸に秘めながら、地域でアップダウンを経験された前川さんの貴重なお話しを窺える、貴重な機会となりました。
さて、研修内容を振り返りましょう!
【アイスブレイク】
今回は二人一組になりお互いの共通点を見つけ合う時間を取りました。最高17、8個の共通点を見つけたペアもいて、顔なじみの協力隊同士でも三回目の研修会に来て、新たな発見があったのではないでしょうか。
【前川さんの講義】
前川さんは三年間の任期を時系列に沿って振り返りました。1年目は、就任した東近江市奥永源寺の「地域づくり」について、奥永源寺を「もっと知ってほしい」という思いから、地域に入る前に、大学関係者やメディア発信など、“奥永源寺の外の人”との関わりを多く持ったといいます。しかしそういった地域の外に向けた活動から始めたことで、二年目のはじめ、今の自分の活動が地域に必要とされないことを実感する機会があったといいます。地域の人からの現実的なご指摘により、ようやく本来の意味での「地域づくり」に目覚めたそうです。
前川さんが目を付けたのは奥永源寺地域に伝わる「木地師」の文化。「木地師」とは、ろくろを用いて椀や盆などの木工品を加工、製造する職人です。現在では全国各地に広がる「木地師」のはじまりが、奥永源寺の地域であることを知った前川さんは、それこそが地域の宝の一つであると目をつけ、行動に移しました。
地域の人たちにとっては当たり前の「木地師」のご先祖をまつる風習が、全国に広がる木地師の子孫やファンにとっては特別なものであるということに外から来た前川さんだからこそ気づくことができたといいます。
二年目の初めに地域と関係が悪くなった前川さん。地域の方々から、一見きついようにも思える言葉をかけられた時に、自分の活動を振り返りました。そして改めて、地域の潜在的な魅力の磨き上げに熱い想いを持ち取り組んだため、地域の方々からの信頼を受け取ることができたと雄弁に語る前川さんの姿は、協力隊の皆さんの目にはどのように映ったのでしょうか。
「木地師」の文化の再発信や、そのほかの奥永源寺の魅力の掘り起こし、磨き上げにより、地域に多くの人が来てくれるようになると、地域の人たちも喜び、前川さんの存在を次第に認めてくれたそう。「協力隊の任期が終了した後の未来に不安を抱える方もいるかもしれないが、少なくとも初めの二年間は焦らず地域に寄り添ってほしい。そうすれば自ずと、声をかけてくれる人や、協力してくれる人で回りがあふれていると思う。」と半年~1年が経過した協力隊へエールを送りました。
また、協力隊の一つの試練ともなりうる行政職員との関わりについても、前向きな姿勢でとらえることの大切さをお話しいただきました。「然るべき時に厳しく指導してくれる人は大切にすべき。行政の人とも沢山けんかしたし、一時的に感情がついていかないことももちろんあったけど、もらった指摘のおかげでいいものが作れたし、大変感謝をしている。互いの意見をあきらめずに伝えあってほしい。」と語り当時を振り返りました。
大丈夫、と寄り添ってくれる方を大事だと思えるのはもちろんですが、良い方向に向かうために本気で一緒に考えてくれる人の、厳しい言葉を大切にすることは、協力隊に限らず、どんな仕事をするうえでも大切にすべきことだと感じた一幕でした。
今回の研修会では、「信頼貯金」というワードを多く耳にしました。協力隊の皆さんの活動内容は様々で、活動の進捗の中で先が見えず、モチベーションを保つことが難しいことも多くあるかと思います。しかし、それでもこの日々の中で、目の前のこと、人に丁寧に関わることで、三年後の未来が変わってくることをお伝えいただきました。
午後からは、2月2日開催予定の第4回研修会「LINK and TRY SAGA 大発表会 -online-」に向けて、SCNから門脇恵さん、橋本高志さんによるプレゼンの極意についての講義が展開されました。
「プレゼンをしたくない!」のタイトルコールから始まった門脇さんのプレゼンですが、その労力と伝わり方への差異があるからこそ、伝えたいことを伝えられるように、できる限り準備を整えて臨むことの大切さをお伝えいただきました。橋本さんからはプレゼンテーションのタイトル決めについてのポイントを教えていただきました。それらの講座を踏まえ、2月2日の発表会の仮タイトルを協力隊の皆さん一人ひとりに発表してもらいました。
【研修を終えて】
今回は、協力隊の皆さんが半年~1年超の任期を終えての第3回研修会でした。ミッションの進捗や活動状況について、個性が出てくる時期に差し掛かり、だからこそ周りと自分の状況を比較する機会が多少なりとも出てくる頃かと思います。
だからこそ、前川さんの言葉から、改めて協力隊としての原点に立ち返り、勇気をもらった方も多かったのではないでしょうか。
次回の発表会では、みなさんの活動を一旦ここで立ち止まって振り返る、素敵な時間になることを願っています。