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「プリンで佐賀の酪農と地域を盛り上げる」大富藍子さんインタビュー

「プリンで佐賀の酪農と地域を盛り上げる」大富藍子さんインタビュー
みやき町地域と人
みやき町

▼この記事でわかること
・大富牧場の加工部門「フライングカウ」と「プリン県さが」で活動する大富藍子さんのインタビュー
・50以上のプリンの店舗を掲載する、「さがプリンマップ」作成の経緯
・「プリン県さが」の活動内容
・2024年バルーンフェスタでアクシデントに見舞われるも一日でプリン3,000個が完売
・フライングカウは、酪農の未来をより良くするためにやっている

大富 藍子さん
大富牧場 フライングカウ・オーナー、プリン県さが・実行委員長
みやき町生まれ。28歳でUターン後、『大富牧場』3代目との結婚を機に酪農に触れる。2018年に『大富牧場 フライングカウ』として自家製プリン販売をスタート。2020年に県内のプリン生産・販売の情報をまとめた「さがプリンマップ」の制作をきっかけに、「プリン県さが」としてプリンによる地域活性化に取り組む。
https://www.instagram.com/purinkensaga/

プリンには地域と人を元気にするパワーがある

「プリン県さが」。佐賀県民なら一度は名前を聞いたであろう、このグループの活躍はめざましい。県内外でのイベント販売、さがプリンマップの発行、全国放送のバラエティに出演、2024年のバルーンフェスタ中止に伴う緊急販売では3,000個が完売…
2020年の結成以降、たった4年で佐賀のプリンを全国区にした「プリン県さが」の実行委員長が大富藍子さんです。

大富さんがプリンづくりを始めたのは、約60年の歴史を持つみやき町唯一の牧場・大富牧場の三代目と結婚したのがきっかけ。
朝から晩まで牧場で働く家族の姿を見て、牧場や生乳(※)のPRになることをしたいと思ったそう。牛乳や、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品も検討しましたが、原価や先行投資にかかる費用を計算した結果、プリンを作ることに。
※…しぼったままの牛の乳。均質化処理、加熱殺菌をしたものが「牛乳」になる。

みやき町にUターンする前はアパレル業界などで働いており、お菓子は夫や子どもに作ってあげていた程度。商品化に至るまではスランプや挫折も経験しましたが、2018年に大富牧場の加工部門「フライングカウ」を立ち上げ、プリンの販売をスタートさせました。
店舗販売をはじめ通信販売、卸販売も行い、軌道に乗った頃にある転機が訪れます。

2020年のローカリスト(※)として、ワークショップで県内のプリン販売店舗をまとめた「さがプリンマップ」を作成することになったのです。
当時はコロナ禍まっただなか。人がリアルで集まることが難しい状況でしたが、プリンで佐賀を盛り上げたいという気持ちがありました。
「元々、県内のプリンをリサーチしたり、フライングカウに来たお客様が『こんなのあるよ』と教えてくださったりして、プリンを売っている場所が県内にたくさんあるのは知っていました。地域の活性化につなげられるのではと考えていたタイミングでローカリストの依頼があり、30人近くいるワークショップなら県全体のマップを作れそうだなと。
コロナ禍の影響で、家から1〜2時間圏内を旅行する「マイクロツーリズム」がプッシュされているのを知り、「観光ついでにプリンを買って帰る」という流れをマップで作ろうと考えました。消費が落ち込んでいる時だから、少しでも地域を活性化したいと思ったんです。」
※…佐賀県内での地域づくりの実践者のこと。佐賀県では、若い世代が地域づくりへ参画するきっかけづくりとして、ローカリストとの交流を通じて地域づくりの楽しさを知り、体感してもらう「SAGAローカリストアカデミー事業」に取り組んでいる。

2020年9月に「プリン県さが実行委員会」を発足し、2021年8月に「さがプリンマップ」第一弾を発行。反響は想像以上に大きく、生産者たちとの横のつながりもできました。県外からも「プリンを買いたい」という声が多く届き、横浜や大阪の百貨店で催事も行いました。

「いま振り返ると、コロナ禍だから反響が大きくなったのはあると思います。毎日毎日、今日はコロナが何人出ましたというニュースが流れる。そんな中で、「プリン県さが」は心が和む、明るいニュースだったのかもしれませんね」

コロナ禍のピークが過ぎても、「プリン県さが」の勢いは衰えることなく、多くのメディア露出やイベント出店を行なっています。
2023年には「さがプリンマップ」第二弾を発行しました。

アクシデントに見舞われるも一日で3,000個のプリンが完売

2024年、「プリン県さが」の知名度がさらに上がるきっかけとなったのが、バルーンフェスタの中止。
毎年、約80万人の方が訪れるバルーンフェスタ。「プリン県さが」からはフライングカウを含む7店舗が出店予定でしたが、大雨の影響で2〜4日目が中止になり3000個の在庫を抱えることに。
大富さんは東京出張から帰ってきた直後にその連絡を受け、代わりの販売場所を求めて奔走したと言います。結果、翌日朝から佐賀駅前で販売できることが決定。その後、大富さんは「プリン県さが」のSNSでひたすら発信しました。

「中止が決まったのがバルーンフェスタ一日目の夜だったので、とにかくなんとかしなければと必死でした。いろんな方にSNSの投稿をシェアいただいたおかげで、翌朝8時半から駅前に多くの人が並んでくださいました。
職場が近所にある方やSNSを見て駆けつけてくださった方、サガン鳥栖や佐賀バルーナーズの選手も来てくださって、中には数十個買って『子ども食堂に持っていきます』という方も。
おかげさまで15時ぐらいにすべて売り切れました。
困った人を助けるために行動できる方はこんなにいらっしゃるんだなと、とにかくありがたかったです」

一日で3,000個のプリンが売れたことはSNSを中心に大きな話題になりました。今後も、「プリン県さが」としての販売は続けていきますが、ゆくゆくはマップに掲載している店舗をめぐるスタンプラリーなども実施したいと考えているそうです。

酪農業界は後継者不足。だからこそ次世代には魅力とともにつなぎたい

フライングカウと「プリン県さが」の両方で中心的に活動している大富さん。その根底には、フライングカウの名前の由来にもなった子どもたちの笑顔と酪農への思いがあります。
「フライングカウを立ち上げる前、自分の子どもたちにプリンを作ってあげたら『お母さんプリン作れるの!?すごいね!』と言って、食べたら『うわ〜〜〜!!!』って飛び上がって喜んでくれたんです。この笑顔や喜び方は今しかない、忘れないようにしようと思って、店名をフライング(飛び上がる)カウにしました。」

取材中、フライングカウのカフェには女性グループや親子連れなどのお客さんが訪れていました。SNSの影響もあり、ときには行列ができることも。3月には鳥栖に2号店をオープン予定で、道のりは順調ですが、大富さんは牧場の未来を見据えています。

「佐賀県の酪農の戸数は、この15年で107軒から26軒まで減りました。私の目標は、次世代に魅力的な牧場をつないでいくこと。フライングカウが、牧場のPRやリクルートの役に立ったらいいなと思っています。細くても長く確実に牧場を続けていけるようにこれからも活動していきます。」

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ローカリストアカデミー大富さん紹介記事:
https://www.sagajikan.com/sagalocalist/localist/2020/ohtomi.html
ローカリストアカデミー公式サイト:https://www.sagajikan.com/sagalocalist/

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