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「70代は若者」年齢でブレーキをかけず活動を続ける。木下光次さんインタビュー

「70代は若者」年齢でブレーキをかけず活動を続ける。木下光次さんインタビュー
多久市地域と人
多久市

▼この記事でわかること
・多久市で地域おこし協力隊として活動後、ジビエ加工会社を立ち上げた木下光次さんのインタビュー
・70歳で関東から佐賀にUターンした理由
・地域おこし協力隊の活動内容
・食肉処理・加工施設「西多久テラス」を設立したきっかけ
・西多久テラスから広がる人の輪


木下光次さん
西多久テラス合同会社代表、元地域おこし協力隊
70歳を契機に自分に合う場所で生活を営みたいという思いから、多久市の地域おこし協力隊に応募し、関東から移住。以降3年間、活動に従事しながらイノシシ猟(害獣駆除)を行う。2023年に食肉処理・加工施設「西多久テラス」を設立。市内の飲食店や県内の有志たちと活動の輪を広げている。
HP:https://nishitaku-terrace.stores.jp/

70歳で関東から佐賀にUターン、地域おこし協力隊に。

「18歳まで小城市で過ごしていて、それから上京したんですけど50年経ってもなじめませんでした。向こうは近所付き合いがほとんどないんです。みんな朝早く出て夜遅く帰ってくるし、あいさつはするけれどそれ以上は踏み込めない感覚がありました。佐賀には友だちや親戚が多いし、子どもも独立しているし、仕事も退職したから帰りたいな、と。
70歳でUターンすることに迷いはなかったですが、関東出身の奥さんを残して単身赴任になるのはどうなんだろうと思っていました。けれど、奥さんが応援してくれて決断できました」

移住検討者が実際に移住後の生活を体験できる「お試し住宅」制度で多久市に住んだのをきっかけに地域おこし協力隊として移住。はじめは知らない人ばかりだったけれどすぐになじめたといいます。
「この辺りは高齢の方が多くて70歳なんてまだまだ若造。地元のグループや行事に積極的に顔を出してかわいがってもらいました。人と人の距離感は関東よりもずっと近いですね。信頼してもらったらすっと懐に入っていけます。隣近所で調味料の貸し借りはしょっちゅうですし、カレーを作ったから取りにおいでと電話がかかってくることもあります。もともと人と関わるのが好きだった自覚はそんなにないです。多久に来てから自分にこんな面があったんだと再発見しました」

害獣駆除をきっかけにジビエ加工会社を設立

高齢の方々のための移動販売車の手配や、地元のそば粉を使ったそばの試食会の開催、公共の場の清掃とさまざまな活動をしている中で、木下さんが力を入れていたのがイノシシなどの害獣駆除。近年、佐賀県内では害獣による農作物被害が深刻で、被害額は県内で年間2億円ほどとも言われています。多久市は他地域と比べて山に近く、イノシシの捕獲頭数も多いそう。しかし、駆除されたイノシシのほとんどは埋め立て処分されます。近年では高齢化が進んだ影響で、埋め立てるための深い穴を掘るのが地域の人たちの負担になっていました。

「多久市だけで、1年間に1200頭も駆除しているんです。有効活用できれば、地域の負担も減らせるし、経済的にもメリットがある。そこで食肉加工について学び始めました。昔、喫茶店で働いていたから調理は得意。本やYouTubeでほぼ独学ですが、ちゃんと解体、加工ができるようになりました。そのうち、佐賀はジビエ食の習慣がないからこそ、食べられる場や機会も作っていきたいなと思うようになって、販売や加工場を作ることを考え始めました。ただ、それには保健所の許可が必要で、条件を満たすためには時間がかかることが市と話してわかりました。それなら自分で作ろうと思って西多久テラスを立ち上げました」

木下さんの話し口調はさらっとしていますが、実際は何度も保健所に通い認可を得るのと並行して、コロッケ・カレー・ハンバーガー試食会をTAQUA(多久市の複合温泉リゾート施設)で開催する(2023年5月実施)といった行動力あってのこと。そのパワーはどこから生まれているのでしょう。

「不安がないわけではないですよ。ただ、他の人がやらないなら自分がやろうというだけです。人から頼まれた仕事も自分がやりたいことも自分のできる範囲で最大限の力を注いで、すぐにやるのが基本的な考え方なんです。先が長くないから早く始めないと(笑)」

西多久テラス設立後は、スライスやミンチなど20種類の加工肉の販売や地元飲食店とのご当地メニュー開発、イベントへの出展、ふるさと納税の返礼品への選定、ジビエカレー試食会の開催など、新たな多久名物としてジビエを売り出すことに注力し、現在に至ります。

好きな場所に住めているから精力的にがんばれる

この時期に、会社を手伝ってくれる人やジビエや狩猟の輪を広げる有志も現れました。また、加工施設はオープンにしているので、富士町から利用しに来る人や、惣菜やスイーツを作る人が製造販売のために使うことも。なぜ木下さんの周りにはこんなに人が集まるのか、西多久テラスで営業を担当している中村涼子さんに伺いました。

「ハンター(木下さん)はね、なじみすぎているんですよ、この土地に。昨日も一緒に軽トラに乗っていたらすれ違う人みんなと手をあげて挨拶してた。ほんとうに裏表のない性格なんです。だからなじめるし、頼りにされる。お風呂に入りにいっているTAQUAで人と仲良くなったり、イベント出展で知り合った人とこの辺りで一緒にツーリズムイベントをやる話になったり。今日もね、夕方から他の移住者や私の家族たちとみんなでホタルを見に行きます。」(中村さん)

朝早くから知り合いの農園や田んぼの手伝い。7時過ぎから2時間ほどかけて箱罠の見回りをし、その後餌の追加や罠にかかったイノシシの処理。日によっては、近所の人たちが育てた野菜や果物の乾燥加工や肉の配送。夜は、お風呂がわりに温泉に行って知り合いと話したり、地域の行事に出たりと充実した日々を過ごす木下さん。

地域で暮らし、精力的に活動する上で大切にしていることは。
「人と話をする時は、だいたい7割ぐらいは聞くことに徹しています。若い頃に、1300人ぐらいいる組合で働いていた時は、職員の名前と所属、それぞれの人柄をぜんぶ覚えていました。そういう経験がとても役に立っているかな。いろいろな仕事をしてきたけど、どんな仕事も役に立っているなと思います。」

「うまくいかないこともあるし、時には嫌なことを言われることもある。でも気にしたらダメ。それに、もう年寄りだからと自分でブレーキかけるのも嫌なんです。自分の好きなことをやりたいっていうのが基本にあるし、自分で選んだこの場所に住んでいることがすごく嬉しいですね。だから、だいたいのことは問題ないんです」

西多久テラスの今後の構想は。
「販路を拡大して、きちんと軌道に乗せたいですね。一緒に活動できる人、雇える人が増えたら地域の雇用創出にもなります。ゆくゆくは、後継者に引き継いでいきたいです。」

【11/17(日)】ジビエわくわく体験2024 を開催します。

「ジビエわくわく体験2024」を開催します。

日時
令和6年(2024年)11月17日(日)10時〜15時

内容
1.箱罠フィールド探検
2.イノシシ革での革細工
3.ジビエランチ会
4.ジビエ加工所見学

対象
ジビエに興味がある方は誰でも

集合場所
西多久テラス(多久市西多久町大字板屋9974)

持ち物
汚れてもよい服装、靴、軍手、帽子、タオル、ビニール袋

参加費
無料

参加方法
下記フォームから申し込み(先着10名)https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeI3ILWFvx35KhpaYhTEY03yK2ANVa8Ede-bp-_mPwdwlhPqA/viewform?pli=1

問い合わせ先
西多久テラスぷらす協議会
TEL:090-9589-6282
E-mail: nishi.taku2023@gmail.com

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